私はIT企業一筋で20年のキャリアを築いてきた男性です。私はこれまでに一度だけ転職しましたが、今は転職は大成功だったと心から思えます。転職の経験、苦労した点などを記します。
まずは私が転職を決断した経緯についてです。私の前職はいわゆる某大手メーカーの系列のシステムサービス会社でした。親会社を持つといっても、ベンダーとして自由競争の中で受注を獲得して売上を伸ばす必要がありました。配属されてからの数か月を除き、常時受注を獲得出来た顧客先に常駐しての勤務となりました。
私の部署では先輩社員もほとんど本社にはおらず、皆それぞれの顧客を抱えていました。私は退職するまでに5か所ほどの顧客先に常駐しましたが、大きな企業ほどプロジェクトの進め方について干渉してきました。相手の文化に合わせながら足並みを揃えて進める必要がある上、顧客の要求は常に厳しく、現場で受けるストレスとプレッシャーは半端なものではありませんでした。
そして長時間残業になる傾向が続きました。本社は社員を守るどころか、全く状況を把握せず、売上しか追及しない体質でした。最後に常駐した顧客から休日出勤を強いられ、怒りが頂点に達し、転職を決断しました。
転職活動時は心身の疲労もピークで、当初進め方が分かりませんでしたが、転職エージェントのサービスを利用することで活動の足掛かりを得ました。私の希望は自らが働き方を選択できて、ライフワークバランスを保てる環境に身を置くことでした。エージェントの提案から社内SEやユーザー系のシステム開発会社が私のニーズを満たせる可能性があることが分かりました。しかし、全国転勤が有ったり、スキル的に私の強みが生かせそうに無い、実際の社風が分からない、などで活動には期間を要しました。半年以上が経過して諦めかけていた頃、あるユーザー系の企業とご縁が有り、転職を決めることが出来ました。
退職を前職の企業に伝えることは勇気を要することでした。私はあるプロジェクトのリーダでしたから、顧客先や同僚に迷惑を掛けることは分かっていました。上司に伝えたところ、慰留されました。私は当時仕事ぶりを評価してもらえていましたが、後日、役員クラスの人からも慰留されました。
しかし、自分の人生こそが大切であり、全く納得して働けない会社生活を過ごしてきたことから私の決断は揺るぎませんでした。退職日については少々揉めましたし、有給休暇は最後に3日間のみ消化を認められました。最後まで、社員を大切にしない企業体質に私の決断は誤っていなかったと確信することが出来ました。
転職を果たした企業では文化があまりにも違うので戸惑いました。叱責をすべき局面で、叱責をせずに冷淡に受け止められるのは人種が違うと思いましたし、社内に固まって社員が仕事をするので、人間関係をこじらせると厄介でした。前職は顧客先常駐でしたので、つまらない人間関係を気にしている余裕は無かったです。
またユーザー系企業なので親会社の事業を覚える必要がありましたが、業務知識がゼロの状態でしたので、周囲の同僚のレベルに付いていくのに非常に苦労しました。プロジェクトの進め方も独特の文化を持っており、社内のレビューなどに煩わしさを感じることもしばしばでした。周囲に一定の信頼をしてもらえるまでには数年を要しましたし、業務を覚えて提案が出来るようになるまでにも苦労をしました。
しかし振り返ってみると転職は大成功だったと思います。社員が休暇を取得することに理解を示さない前職に比べ、今の会社は逆に奨励します。またライフワークバランスを保った働き方を大切にしています。IT企業なので労働時間が多くなってしまう時期もありますが、前職と比べると企業風土がまるで異なります。
顧客先常駐のプレッシャーからも解放され、自社の文化に順応さえ出来れば自らの裁量で働けます。これだけの劇的な労働環境の変化は転職をすること無しに実現することは出来なかったと思います。今では自らが納得して働ける日々を過ごすことが出来ています。
