30代の女性です。私が短大生の頃、元々絵を描くのが好きで自分のスキルを生かせる仕事がしたいと思っていたのですが、なかなかいいなと思う就職先が見つからず、この頃は毎日四苦八苦していました。
皆就職先が決まっていく中、たまたま大学に張られている求人を見つけて応募してみたところ、そこの会社から採用の連絡をいただくことができたのです。
その会社は東京のほうではけっこう有名な劇団で、私はそこの裏方スタッフとして働くことになったのです。もちろん絵を描く機会が仕事の中でありますし、その劇団の周辺は観光地になっており、数々の飲食店があるので、食べるものにも困ることはありませんでした。
私が配属されたのは大道具スタッフというもの。舞台の転換する時に、舞台の小道具や大道具まで、そのスタッフが移動したりします。大道具によっては、役者を乗せた状態で道具を移動しなければなりません。それは女性だろうと、男性だろうと関係ないんです。
まだ入社したての私にとっては、とてつもないハードな仕事に感じました。もちろん劇団なので、公演で県外に行くことが多く、休みはほとんどありません。加えて大道具スタッフの仕事は、まるで男性がやるような仕事です。大工仕事やトラックの運転、大道具の搬送など、これも男女関係なく皆協力してやります。元々絵が好きでそれを仕事にしたいと思っていた私ですが、私には、それ以外で大きな問題がありました。
それは、人とのコミニュケーションをとるのが苦手だった事です。私は昔からおとなしくて人と接するのがあまり得意な方ではありませんでした。これが働く上で大きな支障をきたすようになっていったんです。舞台の成功は、チームプレーにかかっています。なのでお互いコミニュケーションは絶対に必要です。
なんとか舞台は無事何事もなく終わりましたが、その後に私は上司やら何度も怒られてしまうのです。相手に分かりやすく説明するのも苦手だったので、就職して日が経つにつれ、私は会社の中で一人浮いた存在になっていきました。そして、私は劇団に長く勤めていく自信がなくなり自分から退職願いを出したんです。辞めたあと、私は田舎にある実家へと帰りました。1か月間働かなかったと思います。何をすればいいのかわからない。
舞台での仕事で起こった自分の失態など考えると、働こうとする気力がまったく湧かなかったのです。ただただ自分の力不足を思い知り、毎日泣いていました。そんな時、そろそろ仕事を始めようと思い、ハローワークに行った時です。たまたま目に留まった求人がありました。
車を使えば15分ほどの距離にあるお菓子工場の仕事でした。給料も悪くなかったですし、場所も実家から、そんなに遠くはありません。さっそくハローワークの人に面接の許可を電話でお願いしてもらい、私はその3日後にその工場の面接に行きました。
他の近所の家が近くにあり隠れ家的な工場でそんなに大きくはありません。面接を終えると、そこの責任者の方から明日から来てくださいと言われました。それから次の日、初めての工場での仕事。人数はそんなに多くなく、皆、白い服にマスクをつけて働いていました。
初めて見る光景に、私は最初、違和感が凄かったです。その工場は主にチョコレートを使った洋菓子を作っていて、ガトーショコラ、クッキー、ラスクなど焼き菓子が多かったです。チョコレート自体が絶品で、それで作るお菓子は本当に高級感がありました。元々お菓子が大好きだった事もあり、人とあまりしゃべる必要もないので、私にはぴったりの職でした。しかも、一人でこつこつ仕事をするのが得意だった私はある程度の仕事は一人で任せてもらえるようになったのです。今思うと本当に転職してよかったと思います。
